はじめに
相続税対策において、名義預金は特に注意が必要な問題です。
名義預金とは、被相続人(亡くなった方)が配偶者や子供、孫などの名義で財産を残しているものを指します。これにより、相続税の申告漏れが発生するリスクがあり、その結果として追徴課税や延滞税が課される可能性があります。
本記事では、名義預金に関する基本的な知識、税務調査における判断基準、具体的な対策方法について詳しく解説します。
名義預金とは
名義預金は、被相続人が自分以外の名義(配偶者、子供、孫など)で預金を保有している状態を指します。この預金は、実際には被相続人が所有しているものであるため、相続税の課税対象となります。名義預金が見つかった場合、相続税の申告漏れとして指摘され、追徴課税や延滞税が課されることがあります。
名義預金が問題となるケース
名義預金が問題となる典型的なケースには以下のようなものがあります。
被相続人が相続人名義で貯金していた場合
被相続人が子供や孫の名義で貯金しているが、実際には被相続人が管理している場合には名義預金として相続財産になります。
実務上もよく見かける名義財産です。
不動産の名義は子供や孫になっているが、実際に資金を出したのは被相続人である場合
不動産の購入資金を被相続人が出しているが、名義は子供や孫になっている場合には、名義不動産として相続財産になります。
実務上はあまり見かけませんが、通帳の取引履歴から判明することがあります。また、小さい子供が自己資金で不動産を買うことは基本的に考えられないため、名義不動産を疑う要素とも考えられます。
被相続人が専業主婦の妻のために給与の一部を妻名義で預金していた場合
被相続人が自身の給与を妻名義の口座に預けている場合も名義預金となります。
これも実務上、よく見かける名義財産です。
税務調査における名義預金の判断基準
税務署は相続税の申告内容を精査する際、特に名義預金に注目します。以下の三つのポイントを基に名義預金と判断されることがあります。
被相続人と同じ印鑑を使用している場合
被相続人と名義預金の口座が同じ印鑑を使用している場合は、名義預金と判断される可能性が高いです。
通帳や印鑑を被相続人が保管している場合
通帳や印鑑が被相続人の管理下にある場合も、名義預金とみなされる可能性があります。
本当に贈与した事実があるのか
贈与契約書の有無、贈与税の申告状況、贈与を受けた人がその事実を知っているかどうかが問われます。
簡単に3つ挙げていますが、本当はもっと複雑な判断が必要です。
名義財産に関する判例は数多くあり、状況に応じて多角的な検討が必須の論点であることがわかります。気になる財産がある方は相続専門税理士へ相談された方が良いでしょう。
名義預金が見つかる理由
税務署は、相続税申告時に被相続人の預金口座の動きを詳細に確認します。名義預金が発見される主な理由は以下の通りです。
預金口座の大きな出金
被相続人の預金口座から大きな金額が出金されている場合、その目的を確認されます。
定期的な入金の確認
子供や孫の口座に定期的に入金されている場合、その資金の出所が被相続人であるかどうかを調査されます。
居住地近くの金融機関の利用
被相続人の居住地近くの金融機関が利用されている場合、その口座が名義預金である可能性が高いと判断されます。
名義預金が見つかった場合のペナルティ
名義預金が見つかった場合、以下のようなペナルティを受ける可能性があります。
相続税の再支払
申告漏れが発覚した場合、相続税を再度支払う必要があります。
また、修正申告を行う必要もあり、想像よりも大変なことが多いです。
延滞税
相続税の支払いが遅れた場合、延滞税が課されます。延滞税は年14.6%(2ヶ月以内の場合は年7.3%)が適用されます。
過少申告加算税
申告した財産が少なかった場合、過少申告加算税が課されます。追加納付税額の10%(追加納付税額が期限内に申告した税金または50万円を超える部分に対しては15%)が適用されます。
名義預金の具体的な対策方法
名義預金を防ぐためには、以下の具体的な対策を講じることが重要です。
贈与契約書の作成
贈与を行う際には、必ず贈与契約書を作成し、双方の署名捺印を行います。
贈与税の申告
贈与を受けた場合には、適切に贈与税を申告し、支払います。
通帳や印鑑の管理
贈与した財産の通帳や印鑑は、贈与を受けた人が管理するようにします。
定期的な確認
贈与の事実を定期的に確認し、記録を残しておきます。
専門家への相談
名義預金に関する疑問や不安がある場合は、相続税の専門家に相談することをお勧めします。
名義預金に関する具体例
ケース1:専業主婦の妻の名義預金
被相続人が専業主婦の妻の名義で預金を行っていた場合、その預金が名義預金と見なされる可能性があります。この場合、被相続人が毎月の給与の一部を妻の口座に入金していたが、実際には妻がそのお金を使用していなかったとします。税務調査では、この預金が被相続人の資産として扱われることになります。
名義預金と見なされないためには、妻が実際にそのお金を管理し、使用している事実が必要です。念のため、贈与契約書も作成した方が良いでしょう。
ケース2:子供名義の預金
被相続人が子供の名義で預金を行っていた場合も名義預金と見なされることがあります。例えば、被相続人が子供の将来の教育費として子供名義の口座に定期的に入金していた場合、子供がその事実を知らず、通帳や印鑑が被相続人の管理下にあったとします。この場合、税務署はその預金を名義預金とみなし、相続税の申告対象とする可能性があります。
これを避けるためには、贈与契約書を作成し、子供がその贈与を受け取ったことを証明する必要があります。
ケース3:孫名義の預金
被相続人が孫名義で預金を行っていた場合も同様に名義預金と見なされることがあります。例えば、被相続人が孫のために預金を積み立てていたが、その預金の通帳や印鑑が被相続人の管理下にあった場合、税務署はその預金を名義預金と判断する可能性があります。
このような場合も、贈与契約書の作成や贈与税の適切な申告が必要です。
名義預金に関するよくあるご質問
- Q名義預金が見つかった場合、どのような手続きを行う必要がありますか?
- A
名義預金が見つかった場合、まずは税務署からの指摘に対応することが必要です。具体的には、以下の手続きを行います。
①追加の相続税申告
名義預金が発見された場合、相続税の修正申告を行います。②延滞税の支払い
支払いが遅れた相続税については、延滞税を支払います。③過少申告加算税の支払い
申告漏れが発覚した場合、過少申告加算税を支払います。④専門家への相談
手続きが複雑な場合は、税理士に相談することをお勧めします。
- Q名義預金を防ぐための最も効果的な対策は何ですか?
- A
名義預金を防ぐための最も効果的な対策は、以下の通りです。
①贈与契約書の作成
贈与を行う際には、必ず贈与契約書を作成し、双方の署名捺印を行います。②贈与税の適切な申告
贈与を受けた場合には、適切に贈与税を申告し、支払います。③通帳や印鑑の管理
贈与した財産の通帳や印鑑は、贈与を受けた人が管理するようにします。④定期的な確認
贈与の事実を定期的に確認し、記録を残しておきます。⑤専門家への相談
名義預金に関する疑問や不安がある場合は、相続税の専門家に相談することをお勧めします。
- Q森大輔税理士事務所ではどんな対策をしてもらえますか?
- A
当事務所では、通帳の取引履歴を通常10年間遡って名義財産の確認をしています。
税務署が10年分の取引履歴を確認する権限を持っているため、これに対抗するため10年分の確認を行うようにしております。税理士によって確認する年数が異なりますが、当事務所ではお客様が最も安心できるように10年間の確認をしております。
生前対策では、名義財産に認定されないように形式面から全てサポートします。生前から一緒に相続対策を進めることをおすすめしております。
まとめ
名義預金は相続税対策において注意が必要なポイントです。
適切な対策を講じないと、相続税の申告漏れとして指摘され、追徴課税や延滞税などのペナルティを受けるリスクがあります。本記事で紹介した名義預金の判断基準や具体的な対策方法を参考に、早めに対策を講じることが重要です。相続税対策に不安がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。
皆様の相続税対策がスムーズに進むことを願っております。
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