相続税申告書第11表の様式改訂への私見

令和6年1月以降に開始する相続に関する相続税申告書第11表(相続税がかかる財産の明細書)の様式が改訂されました。この改訂は、各財産の種類別に所在場所や数量等の記載方法を明確化し、申告書作成の利便性を向上させることを目的としています。以下、詳細な変更点とその影響、注意点について説明します。

この記事を書いた専門家
税理士 森 大輔

森大輔税理士事務所 代表税理士。FP2級。
相続専門税理士として、相続税申告400件超、相続対策100件超の圧倒的実績を持つ。豊富な経験から相続税を知らないことで損をする人を救うために終活支援やセミナー活動にも注力。東京税理士会所属。

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様式改定の概要

相続税申告書第11表は以下のように改定されました。

第11表(合計表)

遺産の分割状況や分割年月日、相続財産を取得した人の氏名の一覧を記載します。

相続財産を取得した人ごとに、取得した財産の価額の合計額を記載します。

付表の分割

  • 付表1(土地・家屋等用)
  • 付表2(有価証券用)
  • 付表3(現金・預貯金等用)
  • 付表4(その他の財産用)

    これにより、各財産の種類別に詳細な記載が求められるようになり、財産の明細をより明確にすることが可能となります。

    見本は下記リンクをご参照ください。

    国税庁リーフレット

    様式改定による影響

    ポイント

    この改訂は、相続税申告に対していくつかの影響を及ぼす可能性があります。

    申告書作成の平準化

    財産の種類別に分割された様式により、各財産ごとの情報整理がしやすくなります。

    記載ミスや情報の漏れを減少させることで、申告書作成がよりスムーズに進むことが期待されます。

    相続専門税理士 森大輔
    相続専門税理士 森大輔

    これは良いことだと思います。
    相続税申告書は記載方法が自由すぎて人ごとにこだわり(?)が発生していたと想定されます。私も複数事務所のやり方を見てきましたが、それぞれ特色があり、そこに合わせる必要があることは不思議でした。
    様式が改定され、記載内容が整理されたため、誰もが同じような情報を記載することになったと思います。

    申告内容の明確化

    各財産の明細をより詳細に記載することで、国税庁による審査が迅速化される可能性があります。

    クライアントにとっても、自身の財産の詳細な内訳を確認しやすくなります。

    相続専門税理士 森大輔
    相続専門税理士 森大輔

    税務署側は提出される申告書が統一されると嬉しいと思います。私は元々すべて記載していたため、記載箇所が変わるだけですが、各記載事項を省略していた税理士多いと思われ、チェックする側の視点に立つと非常に大変だったと想定されます。
    そんなことより、クライアントが申告書を見るときに財産の詳細がわかりやすくなったことは価値があると考えています。

    電子申告の促進

    国税庁は「e-Tax」システムの利用を推奨しており、相続税申告のデジタル化が進むことが期待されます。

    e-Taxを利用することで、申告書提出の手間が省けるだけでなく、必要な添付書類のデータ提出が容易になります。

    相続専門税理士 森大輔
    相続専門税理士 森大輔

    これは完全に国側の都合ですね。
    私は、相続税の賦課課税方式への一石を投じる改定ではないかと感じました。財産内容を確実に捕捉するためにどこまで細かい区分にすればいいかテストしているのでは…?と疑っています。
    これは私が元々、将来、相続税申告は無くなると考えているので敏感になりすぎているのかもしれません。

      相続実務上の注意点

      改訂内容の把握

      税理士としてクライアントに対して、改訂内容を正確に伝え、必要な準備を進めることが重要です。

      特に、令和6年1月以降に相続が開始する場合、改訂後の様式に従った申告書を提出する必要があることを強調しましょう。

      相続専門税理士 森大輔
      相続専門税理士 森大輔

      令和6年1月1日に相続があったクライアントがいたら必然的に申告期限ギリギリの申告になると想定されます。
      どこまで守る必要があるか議論の余地がありますが、クライアントに申告時期の話を行う必要があるでしょう。

      書類の詳細な記載

      各付表に必要な情報を漏れなく記載することが求められます。
      多くは発生しないとは思いますが、記載内容に不備があると、税務署から指摘が入ることも考えられます。

      特に不動産や有価証券などの評価額の記載には細心の注意を払いましょう。

      相続専門税理士 森大輔
      相続専門税理士 森大輔

      税理士目線で言うと、令和6年1月1日以降相続発生の案件は、既に路線価改定を待つのみの状態まで仕上げている申告書も多くあると思います。
      改定後の申告書で提出しなければならない場合には、急ぎ全件作成し直しが必要となります。再作成時のミスには気をつけてください。

      運営上の注意点

      教育と準備

      改訂に伴い、事務所内での教育やシステムのアップデートが必要です。

      スタッフが新しい様式に慣れるために早々に案内しましょう。相続税申告になれている方はおそらくすぐに適応できると思いますが、ようやく慣れてきた人には苦しい改定になるかと思います。

      また、各事務所が使っている申告書作成ソフトがいつ様式改定に対応するのか確認する必要があります。

      クライアントへの情報提供

      改訂内容に関するリーフレットや案内文を作成し、クライアントに配布しましょう。

      様式改定の対応時期・申告の方法次第では、申告期限ギリギリになってしまうため、クライアントに不安を抱かせないように情報提供が必須となります。

      相談体制の強化

      改訂後の申告書に関する問い合わせが増えることが予想されます。相談窓口の体制を強化し、迅速に対応できるよう準備を整えましょう。

      まとめ

        改訂後の相続税申告書第11表の適切な利用と記載内容の充実は、クライアントの信頼を獲得する重要な要素です。最新の情報を基に、円滑な申告手続きをサポートし、クライアントの利益を守るために、正確かつ丁寧な対応を心掛けましょう。

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